東日本大震災による津波においては,チリ地震津波など,過去における個人的な体験に捉われて避難しなかった住民も多かったようです.昭和8年の津波の移転地に住んでいるという理由で避難せずに命を失くした人や,防潮堤が建っているからと逃げなかった人も目立ちます.また,個人的な体験とは対極的な,頭だけで理解している客観的な一つのマニュアルだけに捉われることも危険です.その地域特有の自然環境や災害の歴史を熟知し,さまざまな表情を見せる地域の自然に対して,身体的に,かつ柔軟に読み取る知恵や技法を得ることが肝要です.