869年貞観地震津波は,特に仙台湾沿岸における規模の面で,東日本大震災の津波に匹敵することが明らかになった.貞観津波は,震災の20年以上前から調査研究が継続的に行われ,当初の時点では津波堆積物分布(最小の浸水域に相当)は海岸から3km程度,直前の時点においては地震マグニチュード8.4以上が推定されていた.最初の発見より20年もの時間があったものの,貞観津波の実績に基づいた予測が十分に周知され,対策に生かされた例は極めて少なかった.地質記録の時空間解像度や信頼性は他種の記録とは異なる.その特性を十分に踏まえつつ,可能な限り迅速に情報の収集と周知を進め,各種対策に反映させる努力が必要である.