災害誘因の複雑さと時間スケールの不確かさを知る

地震ハザードの規模予測が既往最大の災害に依拠せざるを得なかったことが,東北地方太平洋沖地震による被害を大きくした原因の一つと考えられます.そこから脱却するためには,プレート境界地震発生モデルの精緻化,即ちプレート境界の摩擦特性等の地震発生場の理解と,ひずみエネルギー蓄積状況を精確に把握することが不可欠ですが,現在の地震学の実力では,いずれについても実用レベルに達するのはまだ遠い将来のことであるのが現状です.また,東北地方太平洋沖地震発生以前から貞観地震の研究を通じて,M8クラスの地震が450年〜800年の繰り返し間隔で発生してきたことが明らかにされつつあったのですが,繰り返し間隔については不確定性が大きく,切迫していたことを認識できませんでした.比較的よく研究されている東海・東南海・南海地震の発生履歴を見てもわかるように,「倍半分」の不確かさがあることを肝に命じるべきであると思います.

作成日(撮影日):
2015/04/07 
登録者:
三浦哲 
フェーズ:
事前 
対象:
住民 
カテゴリ:
ハザード評価 
場所:
 
関連する学術論文・資料等
  • 行谷佑一・佐竹健治・山木滋, 宮城県石巻・仙台平野および福島県請戸側河口低地における869年貞観津波の数値シミュレーション, 活断層・弧地震研究報告, 10, 1-21, 2010.
  • 岡村行信・他, 地質調査・津波シミュレーションにもとづく地震発生履歴に関する研究, 宮城件沖地震における重点的調査研究(平成21年度)成果報告, 186-268, 2010.