地震ハザードの規模予測が既往最大の災害に依拠せざるを得なかったことが,東北地方太平洋沖地震による被害を大きくした原因の一つと考えられます.そこから脱却するためには,プレート境界地震発生モデルの精緻化,即ちプレート境界の摩擦特性等の地震発生場の理解と,ひずみエネルギー蓄積状況を精確に把握することが不可欠ですが,現在の地震学の実力では,いずれについても実用レベルに達するのはまだ遠い将来のことであるのが現状です.また,東北地方太平洋沖地震発生以前から貞観地震の研究を通じて,M8クラスの地震が450年〜800年の繰り返し間隔で発生してきたことが明らかにされつつあったのですが,繰り返し間隔については不確定性が大きく,切迫していたことを認識できませんでした.比較的よく研究されている東海・東南海・南海地震の発生履歴を見てもわかるように,「倍半分」の不確かさがあることを肝に命じるべきであると思います.