津波被災後に高台移転を実現したとしても,沿岸部の土地を私有地にしている限り,再び住民が戻ってきてしまうことがあるため,公共用地として規制を強化しなくてはならない.

一般論として,津波被災後に高所移転をしても数年間で原地復帰する例は珍しくない.その主な理由は,被災地の主産業が漁業であるがための,山間部居住の不便さから来るものであった.明治三陸大津波(1896年)から昭和三陸大津波(1933年)の時代と比べ,生活様式や因襲に対する考え方も変わってきたが,20世紀末になっても変わらない部分も見られた.たとえば,東日本大震災以前の状況として,自動車が普及した70年代以降も利便性を求めて,沿岸部に戻ってきてしまう事例が確認された.この復帰を促した一要因は,行政に対するヒアリングでも指摘されたように沿岸部での土地所有である.三陸沿岸地域同様に津波被害を繰り返し受けてきたハワイ島のヒロでは,1960年のチリ津波での被災後に政府が被災した土地を買い上げて,復興計画を実現させている.今後はそのような施策も考える必要があろう.

作成日(撮影日):
2015/04/07 
登録者:
村尾修 
フェーズ:
復旧・復興 
対象:
国 自治体 
カテゴリ:
高台移転 
場所:
 
関連する学術論文・資料等
  • 村尾修,礒山星:岩手県沿岸部津波常襲地域における住宅立地の変遷 −明治および昭和の三陸大津波被災地を対象として−,日本建築学会計画系論文集,日本建築学会,Vol.77, No. 671,57-65,2012.1
  • 村尾修,ウォルター・C・ダッドリー:三陸海岸地域およびヒロにおける津波復興・防災計画の比較,日本建築学会技術報告集,日本建築学会,第17巻35号,333-338,2011.2
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